心臓病のお話 2016年8月

こんにちは、動物病院京都の坂口邦彦です。この所夜も暑くなってきており、自宅で冷房をつけようとすると、リモコンが行方不明!汗だくでなかなか寝付けない状態です。 夏場は体調を崩しやすく、人と同じく動物も熱中症、循環器や呼吸器、泌尿器の問題が出やすい時期ですのでよく様子を見てあげてください。

呼吸困難を呈していると訴えて来られたわんちゃんをお伝えします。 来院時、咳が荒くなり、元気食欲がなくなっているとのことでした。聴診において重度の心雑音が確認されました。心臓の雑音は、獣医師が聴診器で聴いていくものなのですが、音の強さによって、6段階に分かれていて(1が軽度、6が重度)、そのときの音がすでに6段階中の6でした。そこで心臓や肺の状態を確認するために撮ったのが下のレントゲン写真です。

左上の画像は初診時のレントゲン写真です。 右上の画像は健康な子の写真です。 肺野が白くなり、心臓と肺の境界が不鮮明になっているのが見て取れます。 肺は、肺胞と呼ばれる小さな袋が集まってできており、肺胞を通して酸素と二酸化炭素の交換がされています。この肺胞の中に血液の液体成分が滲みだしてしまっている状態、肺水腫となっている状態でした。心臓の左心室から全身へ血液を送り出す力が低下し血液が肺に過剰に貯留してしまう状態で、これは心原性肺水腫と呼ばれます。

検査としては、レントゲン検査、超音波検査、血液検査などが考えられますが、動物さんの状態を安定させるために、優しい方法として、うつ伏せのレントゲン検査と血液検査のみを実施し、治療を優先することにしました。

そこで当院で行った治療として
①マスクからの酸素吸入 その後 高濃度酸素集中治療室での入院管理

②肺から水を抜くための利尿剤の投与

③心臓の負荷を軽減するためにの血管拡張薬、強心薬の投与 を行いました。

治療開始8日後に撮影したレントゲン像が右下の写真になります。 肺野に写っていた白いモヤは消えて、肺と心臓の境界ははっきりとするようになりました。

体調が落ち着いてから、超音波検査により心臓を詳しく検査してみました。すると心臓の左心房と左心室の間の僧帽弁の片側の腱索が断裂し、また反対側が粘液腫様変性を起こしており、うまく弁が閉鎖できなくなっているために逆流が生じ、左心房は重度に拡張しているという状態でした。 心臓の内部は、左心房・左心室・右心房・右心室という4つの部屋にわかれています。 左心室から全身に血液が送られ、全身を巡った血液は右心房に戻ってきます。右心房から右心室を通って肺に血液は送られます。肺で酸素を受け取った血液は左心房へと流れてきます。そして左心房から左心室を通り、全身に血液が送られます。 左心での逆流が生じた結果、肺でのうっ血が起こり肺水腫に至ります。

動物は人と違って、呼吸が苦しいとは言ってくれません。飼い主さんがしっかりと見てあげる必要があります。最近すぐ疲れる、咳が増えてきた、安静にしているのに呼吸が荒い、といった症状が観察された場合、高齢だからと勝手に納得せず、すぐに病院に連れて行ってあげてくださいね。